技能実習制度とは
技能実習制度は、日本の技能・技術や知識を発展途上国への移転を図り、発展途上国の経済成長を担う人材育成を目的とした国際協力の制度です。基本理念として、「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と規定されています。
外国人の技能実習生は、日本における受入企業(または個人事業主等)と雇用関係を結び、出身国において修得が難しい技能等の習得や習熟を図ります。
海外の送出し機関や日本の監理団体、受入れ企業(実習実施者)などが連携して技能実習生を受け入れます。
技能等の実習は、技能実習計画に基づいて行われ、期間は最長5年です。
厚生労働省の「外国人雇用状況」によると、2020年10月末時点の日本で働く外国人172万以上のうち、23.3%の40万2356人が技能実習生。半数がベトナム人で、中国、フィリピン、インドネシア、ネパールが多いそうにゃ。
技能実習の種類
技能実習制度には、団体管理型と企業単独型の2つがありますが、97%以上が団体管理型です。
団体監理型(97%) | 企業単独型(3%) | |
方式 |
海外の送出機関から監理団体(事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の受入企業等(実習実施者)で技能実習を実施。 監理団体は受入企業に代わって技能実習生受け入れの手続きや講習、面接などの企業のサポートを実施。 受け入れ後は、企業が不正せず、適切な技能実習を行っているかどうか監査・訪問指導を行う。 |
日本の受入企業等が、直接海外の派遣元企業(現地法人、合弁企業や取引先企業)の職員を受け入れて技能実習を実施。 *海外の支店や事業所等、一定の関係がある企業でないと企業単独型での受け入れはできない。 監理団体を通さないので、入出国時の手続きや、入国後の講習など、受入企業自らが実施。 |
講習 |
入国直後に、日本語教育や技能実習生の法的保護に必要な知識等についての講習を受けた後、日本の企業等(実習実施者)との雇用関係の下で、実践的な技能等の修得する |
入国直後の必要はないが、日本語教育や技能実習生の法的保護に必要な知識等についての講習を受けた後、日本の企業等(実習実施者)との雇用関係の下で、実践的な技能等の修得する |
入国1年目 |
第1号団体管理型技能実習 |
第1号企業単独型技能実習 |
入国2・3年目 |
第2号団体管理型技能実習 |
第2号企業単独型技能実習 |
入国4・5年目 |
第3号団体管理型技能実習 |
第3号企業単独型技能実習 |
受入人数 |
受入企業の常勤職員数に応じて上限が決められている。 30人以下:3人 |
常勤職員の5%が上限 |
*受入人数 |
下記の受入人数を超えてはいけない
|
|
対象職種 |
対象職種は、第1号・2号は85職種、3号は77職種 |
|
移行 |
↓試験(学科と実技) ↓試験(実技) ↓母国へ一時帰国(1ヵ月以上) 主務省令で定められた基準に適合していると認められた、優良な監理団体・実習実施者に限られる) ➡試験基準 |
|
家族帯同 | × |
送出機関とは
技能実習生の選抜は、送出し国政府が認定した送出機関を通じて行われます。日本国政府と送出し国政府との間で、二国間取り決め(協力覚書)を作成することとされ、各政府は適正な送出機関のみを認定する仕組みを構築しなければなりません。
監理団体とは
監理団体とは、管理団体型で技能実習生を受け入れるために必要となる団体で、外国人技能実習機構から許可を得た営利を目的としない団体(商工会・協同組合・公益社団法など)がなることができます。
海外の送出機関からが技能実習生を受け入れ、傘下の受入企業に代わって技能実習生受け入れの手続きや講習、面接などの企業のサポートを実施し、受け入れ後は、企業が不正せず、適切な技能実習を行っているかどうか監査・訪問指導を行います。
監理団体の業務
・技能実習生1号に対する入国後講習の実施
・技能実習計画の作成指導
・実習実施者に対する定期監査(3ヶ月に1回以上)
ア)技能実習の実施状況の実地確認
イ)技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受ける
ウ)在籍技能実習生の4分の1以上と面談
エ)実習実施者の事業所における設備の確認及び帳簿書類等の閲覧
オ)技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認
・技能実習生からの相談対応
管理団体型で技能実習生を受け入れるまで
- 外国人技能実習機構に対し、管理団体の許可申請(初回)
- 外国人技能実習機構に対し、技能実習計画の認定申請
- 出入国在留管理局に対し、在留資格認定証明書交付申請
1. 監理団体の許可申請
監理事業を行おうとする団体は、外国人技能実習機構へ監理団体の許可申請を行います。
特定監理事業と一般監理事業の2つがあります。
特定監理事業 | 一般監理事業 | |
監理できる技能実習 | 技能実習1号・2号 | 技能実習1号・2号・3号 |
許可の有効期間 | 3年または5年 | 5年または7年 |
2. 技能実習計画の認定
①実習実施者は、技能実習法及びその関係法令に規定される通りに、技能実習計画を作成し、監理団体の指導を受ける。
②外国人技能実習機構の認定を受ける。
③技能実習に従って技能実習を行う。
*違反があった場合、改善命令や認定の取消しの対象
技能実習生の入国から帰国まで
技能実習生 | 監理団体または実習実施者 | ||
入国前 | 技能実習計画作成と認定 在留資格認定証明書交付申請 |
||
1年目 | 技能実習1号 |
講習(原則2ヵ月の座学) 実習 |
|
2年目 | 技能実習2号 | 実習 在留期間更新許可申請 |
|
3年目 |
実習 在留資格変更許可申請 |
技能実習計画の認定申請(外国人技能実習機構) | |
4年目 | 技能実習3号 |
実習 |
|
5年目 |
実習 |
職種
技能実習第1号(1年目)
技能実習第1号は、職種や業務について細かく定められてはいないため、どの職種でも実習が可能と言えます。
ただし、技能実習生が修得しようとする技能が次の点の基準を満たすことが必要です。
- 技能実習制度の本来の目的である、日本の技術や知識を発展途上国へ移転し、その国の発展に寄与できる技能であること
- 同一作業の繰り返しのみで、技能の上達が期待できない作業であってはならないこと
技能実習制度は、技能実習生が母国へ技能等を移転することが目的であるため、第1号技能実習において、単純作業の繰り返しによって修得される程度の実習の場合は、第2号に移転すべき技能等として認められません。
第2号に移行して日本での実習を延長したいのであれば、そもそも従事している職種が、次に記載する移行対象職種である必要があります。
技能実習第2号(2・3年目)・第3号(4・5年目)
第1号技能実習(1年以内の在留)から第2・3号技能実習に移行することを認められる業務は、「移行対象職種」といい、新規の対象業務は、省令別表(官報)への掲載に追加されます。
移行対象職種は「職種」という分類と、さらに細かく区別した「作業」という分類からなり、移行対象職種には必須業務が定められています。
技能実習移行対象職種(令和3年3月16日時点)
技能実習2号移行対象職種 85職種 156作業
※一部職種・作業については3号に移行することができません。
技能実習3号移行対象職種 77職種 135作業
技能実習と特定技能の違い
技能実習 | 特定技能 | |
目的 | 日本の優れた技術を身につけて、帰国後に母国の産業発展に活かしてもらう | 人手不足の解消 |
対象職種 |
第1号:原則、制限なし 第2号に移行できる職種:85種 第3号に移行できる職種:77種 (2021年3月現在) |
14の産業分野 |
転職 | 原則× | 同一分野内で〇 |
送り出し国 |
*2020年4月時点 インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、バングラディッシュ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、ラオス |
理論上、どこの国籍でもOK(イラン・イスラム国を除く) 2021年4月より、短期滞在の在留資格により入国して日本語試験と特定技能試験を受験することが可能になった |
特定技能1号への変更
移行可能な対象職種
技能実習生から特定技能1号への移行が認められるのは、以下の特定技能1号の対象となる14の産業分野のみです。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 産業機械製造業
- 航空分野
- 宿泊産業機械製造業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
特定技能1号への移行の要件
技能実習1号 | 移行は不可 |
技能実習2号 |
|
技能実習3号 |
実習計画を満了すること |
技能実習生から特定技能に移行させるメリット
企業側のメリット
- 即戦力となる
- 新たな支援が少なくて済む
技能実習生側のメリット
- 特定技能に必要となる技能試験と日本語試験が免除される
- 一度帰国せずに日本で働き続けられる
コメント